平野啓一郎さん著「マチネの終わりに」のご紹介です。
なんと今秋、福山雅治さん、石田ゆり子さん主演によってこのマチネの終わりにが公開されるそうですよ。
とても楽しみ。
石田ゆり子さんのインスタをフォローしていて、この情報をキャッチし、
前々から気になっていたこの本を手にすることになりました。
結婚した相手は人生最愛の人ですか?
天才ギタリストの蒔野はある日、演奏会後の友人との食事会にて、
通信社でジャーナリストとして活躍する、記者の洋子に出会います。
出会った時からお互い惹かれ合いますが、洋子には婚約者がいるのでした。
帯タイトルが、「結婚した相手は人生最愛の人ですか?」なんです。
そう問われると、「はい、そうです」と答えられる人はとても幸せだと思うし、
人生の終わりに考えた時にそうだったと思える人もいるかもしれない。
「こんな人と結婚しなければ」そう思う人もいるかもしれない。
それはやはり、結果論なのかもしれない。
その人としか出会えなかった。そうすることしかできなかった。
たまたまそのタイミングで出会ってしまった。
人の出会いにはタイミングがあるから、本当にその人が人生最愛か?
と問われれば、
もっと運命の人は他にもいたかもしれなと考えてしまう。
けれど、だれもが、
その時に一緒にいた、「今、ベストの相手」と結婚したと思う。
婚約者がいて、それなりに幸せという状況の洋子は蒔野と出会うことで、
彼女の中にも蒔野の中にも変化が訪れるのです。
二人が惹かれ合った会話
P29~
「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。
だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。
変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。
過去はそれくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」
話が通じ合うということの純粋な喜びが、胸の奥底に恍惚感となって広がっていった。
彼の人生では、それは必ずしも多くない経験だった。
蒔野と洋子はこんな会話から、
お互いに通じるものを感じとって惹かれあっていくのでした。
出会ってすぐに、パズルのピースがガチッとはまるように、
会話がうまく絡むことってそう少ないです。
蒔野と洋子はお互いの感性や価値観が合致した瞬間を感じたんだと思います。
それはお互い似た繊細さを持ち合わせていたからかもしれません。
美しい言葉がたくさん
これ以上書いてしまうとネタバレになってしまうので控えますが、
この小説では、蒔野が洋子を思う気持ち、
洋子が蒔野を思う気持ちがたくさん表現されています。
その文章自体が美しく、芸術に触れるようなそんな表現がたくさんでした。
読了後はずっと余韻にひたっていたい。そんな恋愛小説でした。
音楽、宗教、戦争、文学、とたくさんの世界情勢や教養的話もたくさん出てくるので、
ある程度それらを知っていないと難しく感じるかもしれません。
だからこそ、ある程度様々な経験を積んだ大人に読んでほしい一冊です。
たくさんの愛が語られている
蒔野や洋子以外にも、洋子のお母さん、洋子のお父さん、キーポイントとなる、三谷という女性。他の人の愛も表現されています。
個人的にはお父さんの愛情を知った時の瞬間が好きでした。
そして、キーポイントの三谷。
こちらとしては、「何してくれるんだー!!!」と憤慨してしまいましたが、
恋愛にはスパイスがつきものですよね。
この人が運命を変えたと言っても過言ではないくらい、この物語のキーポイントです。
もう大分恋愛から遠ざかってしまった
結婚して子どもを産み、恋愛からほど遠くなってしまった今、
この本を読むと、人を好きになった時の気持ちとか、忘れていたものを思い出させてもらいました。
人の心の様子が変化する瞬間を見られるのが、本のいいところで、
疑似体験をしているようでドキドキしました。この素敵な本が、
どのように映画化されるのか楽しみです。
他のキャストの人も気になります。
一種の芸術作品とも言えるこの小説。
時間が愛を熟していくんだなと感じました。
たった3回しか会っていなくてもその人を心のどこかで何度も何度も思うこと。
時間は時として誰かへの思いを薄くし、思いが消える要因にもなるけれど、
この小説の場合はより誰かを思う確信に変わるということを感じました。
30代後半から40代の人におススメかなと思いました。
年齢を重ねるごとに、本を読むと、
若いころには分からなかった様々な心情が理解できるようになったなと感じます。
私的には、この小説凄く好きな一冊になりました。
はぁ、小説って本当に楽しいです。
引用文は全て平野啓一郎さん著書「マチネの終わりに」(毎日新聞出版)より引用
最後まで読んでいただきありがとうございました。