おはようございます。
1冊読み終わったので感想を綴りたいと思います。
今日ご紹介する本はこちら。
中村文則さん著「何もかも憂鬱な夜に」です!
この本の説明
施設で育った刑務官の「僕」は、
夫婦を刺殺した二十歳の未決囚・山井を担当している。
一週間後に迫る控訴期限が切れれば死刑が確定するが、
山井はまだ語らない何かを隠している。
どこか自分に似た山井と接する中で、
「僕」が抱える、自殺した友人の記憶、
大切な恩師とのやりとり、
自分の中の混沌が描き出される。
重大犯罪と死刑制度、生と死、そして希望と真摯に向き合った物語。
表紙裏より引用
この本を読んだきっかけは、文学youtuberのベルさんが紹介されており、
ベルさんがここ最近、いや、今年読んだ本の中でも良かった!
そう、紹介されていた一冊です。
中村文則さん作品を読むのは実は初めてでして、
読み応えのある一冊だと思いました。
読書初心者の人にはちょっと重めの内容で、
気持ちを持っていかれるかもしれません。
けれど、読み応えのある本を求めている人には適した一冊だと思います。
心に残ったこと
P155~
「現在というのは、どんな過去にも勝る。
そのアメーバとお前を繋ぐ無数の生き物の連続は、その何億年の線という、
途方もない奇跡の連続は、いいか?
全てお前のためだけにあった、と考えていい」
このシーンは、「僕」が施設のベランダから飛び降りようとしていた時に、
施設長にとめられ、その後語られたシーンです。
「自殺と犯罪は、世界に負けることだから」
そう、静かに言い聞かせる、「僕」にとっての、「あの人」
「あの人」つまり、施設長の言葉がいつまでも「僕」の中に存在するようになったのです。
P157~
「お前は、まだ何も知らない。この世界に、どれだけ素晴らしいものがあるのかを。俺が言うものは、全部見ろ」
例えば、人間が嫌い。という人がいる。
その人に問いたい。
どれだけの人間とあなたは会ったのかと。
この世界中の人に出会ってから言ってほしい。
あなたの出会った範囲の人だけで、「人間」という人を決めつけないでほしい。
そのようなことを、昔読んだ本で触れたことがある。
そういう意味だと私は思った。
この世の中は、まだまだ知らないことが多い。
まだその素晴らしさに触れていないだけなのかもしれない。
悩む人はきっと、矢印が自分へ自分へと向かい、狭くなる。
もっと外へ外へ向けてほしい。
P160~
「自分以外の人間が考えたことを味わって、自分でも考えろ」
あの人は、僕達によくそう言った。
「考えることで、人間はどのようにでもなることができる。
・・・世界に何の意味もなかったとしても、人間はその意味を、自分でつくりだすことができる」
素敵な言葉ですね。
芸術に触れる、人と出会うとはこういう良さがあると、私は思います。
感想
環境や気質によって元々「悪」の気質を持ち合わせているとして、
それが表に何度も出そうになった「僕」を救ってくれたのは、
あの時恩師がくれた言葉の数々なのでした。
そうやって、自殺や犯罪を犯す境界線というのは、
出会った人の言葉一つで希望に変わるのかもしれないと思いました。
ただ、この世界の素晴らしさを知らなかった。
たったそれだけのことなのかもしれない。
ただ、知らなく、自分の人生を投げやりにするのか、
人に言われた通りに素直に、ちょっと違う世界を除いてみるか、
たったそれだけの差なのかもしれない。
混沌とした気持ちからの、希望へと昇華する過程が素晴らしくよく描かれている作品だと思いました。
色で例えるなら、前半は灰色の空が広がっていましたが、
ラスト、一筋の光がキラキラ見える。
そんな物語でした。
読み応えのある一冊って中々自分の力では見つけられませんが、
そうやって、違う方の紹介を入口に、
出会える時もあるからこそ、私は違う世界への好奇心が強いおかげで救われているのかもしれません。
本はやっぱり、いいですね。
悩んでいる人、もっと本を読もうよ。
そんな風に思う本でもありました。
重めの内容も所々描写されていますので、
精紳的に元気な時に読むことをお勧めします。
以上、中村文則さん著「何もかも憂鬱な夜に」の感想でした!
★過去に読んだ芥川賞作家作品はこちら★
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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