本のある暮らし

人生は一冊の本のように味わい深いです。そんな日々を綴ります。

【読書感想】自分の「しっくり」を模索したい。朝井リョウさん著「生殖記」を読みました。

1冊読み終わったので感想を綴りたいと思います。

 

今日ご紹介する本はこちら。

 

朝井リョウさん著「生殖記」です!!

 

この本の説明

 

「正欲」から3年。

 

www.genko-library.com

 

 

本作も期待を裏切らない衝撃作でした。

 

この本の主人公は「尚成」という青年です。

尚成は、同性愛者です。

 

異性愛者になれない自分の生きづらさの葛藤が描かれています。

 

本作の序文から読者は仰天させられます。

語り手がなんと、

オス個体のアレ→凸なんです。

 

なんという衝撃でしょう。

 

これまで様々な本を読んできましたが、

私はかつてない衝撃に、

これは私が読んでいい本なのか?

いったん本を閉じたくなりましたが、

安心してください。

 

そこは朝井リョウさん。

そんなアレが語る本書は、

朝井リョウさんのエッセイの語りのように、

おちゃらけつつ、

確信を得た言葉がぐいぐいで読者の心を掴みます。

 

あなたたち、見てみぬふりしてましたよね?

何を今更おっしゃるんですか?

いつまでもこっち側が許してあげる感だしていますよね?

 

「正欲」でも感じましたが、

見透かされているような言葉に言いようのない違和感を、

今回もするどく言語化されていました。

 

前作「正欲」のテーマが「多様性」とするならば、

今作は、「共同体の拡大、発展、成長」。

 

生きづらさの根本にある、

生殖という人間の役割が語る衝撃作。

 

これまで感じたことのない未体験を味わいたい方。

共同体の中で生きづらさを感じている人に読んで欲しい、

そんな一冊となっています。

 

心に残った言葉

 

この本を読んで私が心に残った言葉を紹介します。

 

P40~

生きていて虚しい。

これも私が知る限り、ヒトしか抱いていない感覚です。

でもそれって、ヒトだけが自分の大体の寿命を知っているからなのかなと思います。

 

そもそも、自分は必ず死ぬということを知りながら生きている種は、

私の経験上、ヒトだけです。

 

そう考えると、ヒト特有の悩みの原因って、実はそこにある気がするんです。

自分は必ず死ぬということと、その死までの大体の期間を把握している。ここです。

 

大体の寿命を把握しているからこそ、

これくらいの年齢ではこうでありたい。

 

そう思った時の、現実と理想とのギャップが人を悩ませる根源なんだとか。

 

こんなことに悩むのはヒトだけだと語ります。

 

他の種は「今ここ」でしか生きていません。

生きづらさの根底は寿命と今の逆算にあること。

なるほどなぁと思いました。

 

P95~

きっと皆、実は気づいているんですよね。

企業も国家も個人も、永遠に「今よりもっと」を達成し続けるなんて、

不可能だってこと。

そのうえで、「今よりもっと」をやめるわけにはいかないということ。

 

 

毎日あらゆる新商品が発売される昨今。

その機能いる?

ヒトは止まれないんです。

 

だから、「共同体の拡大、発展、成長」のために必死に生きています。

それに貢献できない人たちを卑下する傾向があるなと薄々思っていました。

 

人口も世界的に増え続けていますが、

増え続けていいことなんてないのになんて思います。

 

どんなものも「適量」というものがあるんじゃないかと。

 

日本の人口減少は過渡期を超えただけだから、自然と減るのは当たり前なんじゃないかなと思っています。

 

その度合いや均衡が崩れたからこそ、

地球は悲鳴をあげている。

 

でもヒトは止まれないのです。

分かっていても、共同体という監視の目があるから。

 

私も成長はいいことだ!!

成長した先にこの成長を誰かに伝えたい。

そんな思いもあって、kindleで本なんか出版しましたが、

それもおこがましい行為だったのかもしれない。

この本を読んでそう思いました。

 

成長はもちろん良い面もありますが、

成長し続けなきゃと思うことは、

けっこうしんどいことを身をもって経験しました。

 

おわりに

本作も色々と考えさせられる内容でした。

朝井リョウさんの本にはいつも新しい世界を見せてもらえます。

 

自分がうっすら感じていた違和感を言語化させてもらいました。

 

人それぞれ個体が違うからこそ、

見えている世界、住んでいる世界が違うのですね。

 

だからこそ、いろんな他者の言葉を読むのは面白い。

 

もっと成長しなきゃ!!

そう思いながら本をたくさん読んでいた昔の自分。

 

でもふとした時に気づいたんですね。

読んでも読んでもきっと満足できる日は来ないってことを。

 

人生はある種暇つぶしで、

何かに没頭できる時間があると何も考えずに、

余計なことを考えないために、

私は、何か夢中になれるものを探していたのかもしれません。

 

尚成が時間をかけてスイーツを作り、

それを消費するためにたくさん運動するかのように。

 

共同体という監視カメラから逃れ、

自分なりの「しっくり」を見つけ、

平穏を保つこと。

 

生きづらさを抱える人ほど、

余計なことを悩まないように、

何かを消費する時間はある意味救いになるのかなと思いました。

 

私も尚成のように自分の「しっくり」を模索して、

他人と比べず自分のテリトリーを守りたい。

そんな風に思いました。

 

以上、朝井リョウさん著「生殖記」を読んだ感想でした。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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