本のある暮らし

人生は一冊の本のように味わい深いです。そんな日々を綴ります。

【読書感想】多様性という言葉はもう安易に言えない。朝井リョウさん著「正欲」を読みました。

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おはようございます。

 

1冊読み終わったので感想を綴りたいと思います。

 

今日ご紹介する本はこちら。

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朝井リョウさん著書「正欲」です!

 

 

 

 

 

この本の説明

 

読む前の自分には戻れない

 

どうしたって降りられないこの世界で、

あなたに遭えてよかった。

あってはならない感情なんて、この世にはない。

それはつまり、いてはいけない人間なんて、

この世にいないということだ

 

朝井リョウさんの本を久しぶりに読みました。

 

この本を読むと、昨日までの世界と見え方が変わります。

それくらい衝撃的な作品でした。

 

そして、やっぱり凄い。

 

その一言しか言えないくらい高尚な文学。

久しぶりに読み応えある本と出会えました。

 

内容はとてもセンシティブ。

今まで目を背けていた部分の核心をつかれる鋭さを持ちえた、

傑作あるいは問題作でもある本書。

 

安易におススメとは言えないそんな作品でもあります。

精神が元気な時に読むことをおススメします。

 

内容を簡単に説明すると、

人間の欲にも様々あります。

 

睡眠欲、食欲、性欲。

そんな「欲」の中でも、

世間一般の人が持ち合わせた「欲」から外れた、

「欲」を持ち合わせた人たちの物語です。

 

こういうことを言っている時点でもう、

自分はこちら側の人間なんだと認識しているようなもので、

嫌気がさしてしまうのですが、

 

安易にそういった人たちの気持ちを分かろうとは軽々しくも言えません。

でも、この物語を通してたくさんの気持ちが交差しました。

 

そういう世界があること、

明日にでも自分もそういう世界に足を踏み入れる可能性があること。

他人事ではない思いで読みました。

 

今年読んだ本の中でダントツかもしれない

あやこ
 

 

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冒頭から引き込まれる朝井リョウさんの文章力を感じてほしい

 

朝井リョウさんの魅力を語るとするならば、

私は朝井リョウさんの言葉の彩(いろどり)にあると思います。

 

どうしたらこんな表現が出来るんだろう。

そう思う言葉がたくさんで、

何度も何度も読むのをとめて、言葉をじっくり味わいました。

 

あやこ
 

比喩力、表現力、どれも素晴らしい!!

 

 

多様性という言葉は安易に言えないと思った

 

最近よく聞く、多様性という言葉。

自分と違う部分を認めましょう。

 

そう解釈されるけれど、

裏を返せば、「認めてあげよう」と、

結局はこちら側が容認するために生んだ言葉かもしれないと思ったのでした。

 

P6~

多様性、という言葉が生んだものの一つに、

おめでたさ、があると感じています。

自分と違う存在を認めよう。

他人と違う自分でも胸を張ろう。

 

自分らしさに対して堂々としていよう。

生まれ持ったものでジャッジされるなんておかしい。

 

清々しいほどおめでたさでキラキラしている言葉です。

これは結局、マイノリティの中のマジョリティにしか当てはまらない言葉であり、

話者が想像しうる、”自分とは違う”にしか向けられていない言葉です。

 

想像を絶するほど理解しがたい、

直視できないほど嫌悪感を抱き距離を置きたいと感じるものには、

しっかり蓋をする。

そんな人たちがよく使う言葉たちです。

 

本書より引用

 

マイノリティ=少数派

マジョリティ=大多数

 

P188~

多様性とは、都合よく使える美しい言葉ではない。

自分の想像力の限界を突き付けられる言葉のはずだ。

 

時に吐き気を催し、

時に目を瞑りたくなるほど、

自分にとって都合の悪いものがすぐ傍で呼吸していることを思い知らされる言葉のはずだ。

 

本書より引用

 

多様性と使えば綺麗にまとめられるような気がする。

そう言ってしまえば簡単です。

 

けれども、その言葉一つは視点を変えると、酷な言葉ともなりうる。

危うさを秘めた言葉でもあると思いました。

 

この本を読むまで、

一度だって疑うこともなかった。

多分、多くの人がそう思っていたと思うのです。

 

朝井リョウさんがこの本に込めた思い

 

生きることと死ぬことが

目の前に並んでいるとき、

生きることを選ぶ

きっかけになり得るものを、

ひとつでも多く見つけ出したくて、

書きました。

 Amazonより引用

 

深いです。

そうですね。

二つの選択肢が並んでいるとき、

やっぱり「生きることを選ぶ」自分でありたい。

 

それはやはり、

今日までの自分が明日永遠に続くとは限らないから。

 

生きていると、

いつだって、死と隣り合わせだと思うからです。

 

おわりに

 

様々な感情が交差する本書。

「何者」を読んだ時も感じたのですが、

見透かされているような、

鋭い視点で描かれた物語。

 

この物語を読んで、やっぱりこの人凄いって思いました。

そうだった、この人凄い作家さんだった!!

と、改めて感じたのでした。

 

凄いしか言えないよ。

だって本当に凄いんだから!!!!

 

いつだったか、偶然見たテレビのインタビューで、

「今風の作家と言われないようにしたい」

と答えていたことを今でも覚えています。

 

若くして注目を浴びたからこそ、

相当プレッシャーもあったはず。

でもそんなこと跳ね返すくらい、作品を通して様々なものが伝わってきます。

 

この作品は間違いなく朝井リョウさんにしか書けない物語です。

読めてよかった。

そんな高揚感のある読後感でした。

 

今後も彼の作品を読みたい。

素直にそう思うのでした。

 

ジャンル的には「流浪の月」とも似ています。

 

是非、精神的に元気な時に読んでみてください。

そして感想を頂けると嬉しいです。

 

 

 

★過去に読んだ朝井リョウさん作品★

 

 衝撃のデビュー作。

 あの世にも奇妙な物語のオマージュ作品です。面白かったなぁ。

 「Twitterでは本当のことは言えない。」本当そう!と思った作品。

大好きな作品です。笑いたい方は是非!! 

 心の闇に焦点が充てられていると感じた作品でした。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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