おはようございます。
1冊読み終わったので感想を綴りたいと思います。
今日ご紹介する本はこちら。
宇佐見りんさん著「かか」です!
宇佐見りんさんは、「推し、燃ゆ」にて注目を浴びました。
第164回芥川賞を受賞。
そして、2021年本屋大賞ノミネート。
現代の若い子の気持ちをリアルに描いた文章、
人間の生きづらさを真っ向から綴る表現力。
注目の作家さんでもあります。
今回紹介する「かか」は20歳でのデビュー作となっております。
この本の説明
19歳浪人生のうーちゃんは、
大好きな母親=かかのことで切実に悩んでいる。
かかは離婚を機に徐々に心を病み、
酒を飲んでは暴れることを繰り返すようになった。
鍵をかけたちいさなSNSの空間だけが、
うーちゃんの心をなぐさめる。
脆い母、身勝手な父、
女性に生まれたこと、
血縁で繋がる家族という単位・・・・
自分を縛るすべてが恨めしく、
縛られる自分が何より歯がゆいうーちゃん。
彼女はある無謀な祈りを抱え、熊野へと旅立つ。
裏表紙より引用
物語はうーちゃんが熊野へ出発する出来事、
「かか」がアル中で暴れる様子、
家族の様子、
SNSの中でのうーちゃんと、
交互に展開されていきます。
うーちゃんは、お母さんが大好きだけれど、
とても恨めしく感じています。
そして家族のことも。
どうしてこうなったんだという、エネルギーがあちこちから溢れでています。
不条理な負の連鎖を辿ると、
全部自分のせいだと理由をつけて納得してしまう、
うーちゃんの心の叫びが、
痛々しく、こちらにも伝わる内容でした。
作中に「おまい」という言葉が向けられるのですが、
誰かに向かっての心の叫びのようです。
それは自分でもあったり、弟のみっくん、世の中に対してかもしれません。
一度読んだだけでは「?」になってしまう人もいるかもしれませんが、
この本は何度か読む事で、
ジワジワと心にやみつく文章力を感じました。
そこがこの作家さんの凄いところ。
つまらない人にはつまらない。
凄いと思える人には凄い作品だということは間違いなしです。
心に残ったこと
P68~
かかをととと結ばせたのはうーちゃんなのだと唐突に思いました。
うまれるということは、
ひとりの血に濡れた女の股からうまれおちるということは、
ひとりの処女を傷つけるということなのでした。
かかを後戻りできんくさしたのは、
ととでも、
いるかどうかも知らんととより前の男たちでもなくて、
ほんとうは自分なのだ。
かかをおかしくしたのは、
そのいっとうはじめのうまれた娘であるうーちゃんだったのです。
かかは子宮の手術を控えていました。
そんな子宮を巡り、行きつく場所は、
自分という存在。
自分がいなければ、かかとととは結婚せず、
かかもおかしくならなかったかもしれない。
そういう思考に至ったうーちゃん。
人間の本能の結びつきにより、生まれた子どもたち。
いつだって、責任はないのに、
本能で生きる私たちは生まれた親によって、
平等に生きるということの難しさを感じます。
切なさが伝わる箇所でした。
P115~
かかは生きていました。
ねえだけど、みっくん。
うーちゃんたちを産んだ子宮は、もうどこにもない。
この一文でこの物語は幕を閉じます。
もう、この一文に全てが集約されたような気がして、
一瞬呆然としました。
自分の始まりの場所が無くなってしまった、虚無感が一気にこちらにも押し寄せてくるかのようでした。
この一文で終わる、作者の力を感じ取った瞬間でした。
感想
「推し、燃ゆ」同様薄い本となっています。
方言の言い回しが正直読みにくさがありましたが、
この本は方言の言い回しによって、
独特の世界感を醸し出し、
文学としてより昇華されている作品だと感じました。
表現方法が、方言一つによって、ここまで「まろやか」になるなんて。
例えば、SNSの世界のことを、
うーちゃんは「ぬくい」といいます。
「冷やこくない」とも表現しています。
Twitterの鍵アカウントを拠り所にするうーちゃん。
そこだけ、そのままの現代のTwitterの世界でした。
空気を読むタイムライン。
自分よがりのタイムライン。
承認されたいタイムライン。
あー、分かる分かる。
作者自身もお若いので、ネットの世界の描写がとてもリアルなんです。
そんな風に、方言の力によって、
この物語も普通に書いたらセンシティブに感じる題材でも、
別の世界のように感じる不思議さを持ち合わせているのでした。
一癖も二癖もある作品です。
つまらなく感じる人にはつまらない。
噛めば噛むほど味わい深いと思う人には癖になる作品です。
私も感想やノートにまとめるために、
何度かパラパラめくるたびに、
こういう表現方法をするのか~!と、
一度目には感じなかった感情が巡るのでした。
今後どのような作品を生み出してくれるのか、
私は注目している作家さんです。
今後の作品も楽しみです。
以上、宇佐見りんさん著「かか」を読んだ感想でした!
★過去に読んだ芥川賞受賞作家さんの作品はこちら★
最後まで読んでいただきありがとうございました。
読んだよ~!のしるしに、ポチっと応援して頂けると更新の励みになります^^ ↓