おはようございます。
1冊読み終わったので感想を綴りたいと思います。
今日ご紹介する本はこちら。
砂川文次さん著「ブラックボックス」です!
本の説明
本書は、第166回芥川賞受賞作となっております!!
自転車便のメッセンジャーを仕事とする、
主人公サクマ。
コロナ禍の中人々はマスクをつけている都内。
そんな都内をひた走る。
サクマはいつも思っていた。
ずっと遠くに行きたかった。
今も行きたいと思っている。
ちゃんとしなきゃいけない。
いつかゴールはあるんだろうか。
自分の中の怒りの爆発を、
止められないサクマの生きづらさと葛藤が綴られている本書。
サクマは自分とどう向き合っていくのか?
このような内容となっています。
感想
ブラックボックスという言葉を聞くと皆さんはどんなイメージが湧きますか?
私は底も壁も見えない真っ暗な闇で、
絶望的なイメージが湧きます。
サクマ自身そんな、
光の見えない箱の中で彷徨う感情がこの本から滲み出ていました。
どの仕事についても、
怒りを我慢できず衝突してしまい、長く続きません。
メッセンジャーという仕事はサクマにとって性に合っていました。
人とそれほど関わらずに済み、
数をこなせばそれなりの給料がもらえたからです。
メッセンジャーという仕事は、
サクマの「ずっと遠くに行きたかった」という思いとの対比なのかなと感じました。
この言葉が作中に多く出てきます。
サクマはなぜ遠くに行きたかったんだろう?
P86~
遠くに行きたいというのは、要するに繰り返しから逃れることだった。
「ほんの少しだけ違うことをさ、認めるだけでおんなじような毎日が、
だから変わっていくんじゃないかなあ。
おれもさ、ずっと変わらない毎日を変わっちゃいけない毎日だと思い込もうとしてたから苦しかった気がするんだよなあ」
そして現代社会とも反映されていますよね。
コロナ禍で自転車宅配などを多く見かけるようになりました。
自転車が好きな人、性に合う人にとっては恰好の仕事だったのではいかと思います。
私は割と繰り返しの毎日とか、日々積み上げることが好きなんですが、
サクマにとっては苦痛の毎日だったんだと思います。
それは明日への未来とか、希望とか、安定している人にとっては、
繰り返しの毎日は苦じゃないんですよね。
明日が見えない人にとっての繰り返しの毎日というのは、不安でしかないと思います。
この本は、突然場面が切り替わります。
後半からはサクマの感情と読者は対峙することになります。
それはサクマの心のブラックボックスを覗くような気持に。
そんなブラックボックスの心の中にも、
サクマの役割というか、得意なことが少しキラリと光る瞬間があり、
最終的には少し前を向いて希望を持って向き合ってみよう。
そんな風にサクマが感じ取ったシーンが見られたのが救いでした。
毎回思いますが、
芥川賞って結構重いですね。
心の闇というか、生きづらさに焦点をあてた作品が多い気がします。
そういったものたちは、
文章によって昇華されていくことが多い。
だから人は昔から文学に変換していったんではないかなとも感じました。
自分がどんな仕事が向いているのかさえ分からない。
だからといってやりたい仕事では食べていけない現実。
だからこそ人は葛藤するんだと思います。
食べて行くのに困らなければ、
働きたい人は自由に好きな仕事やってみたい仕事を選ぶことができるのではないのかなぁ。
あなたにぴったりのお仕事はこれです!
なんてAIが教えてくれる時代が来るのでしょうか。
正しい道、心地よい道が用意されていない。
だからこそ、自分でその道を開拓し、整備していかなければならない。
それが出来ない人、難しい人にとっては、
現代社会は生きづらいよなぁって思いました。
自分との対峙、ひたすら向き合うこと。
暗い箱の中には必ず、底と壁がある。
永遠じゃない。
箱の外が光なら、自分で穴を開けて光を入れてほしい。
そんなことを感じる一冊でした。
以上、砂川文次さん著「ブラックボックス」を読んだ感想でした。
★過去に読んだ芥川賞関連の本はこちら★
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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