前回紹介した本「いとしいたべもの」に引き続き、
今回は同じ著者の「こいしいたべもの」を読みましたので、
感想をつづりたいと思います。
「こいしいたべもの」の本の内容
母手作りの、バターがとろける甘いホットケーキ。
父が大好きだった、少し焦げ目のついたビーフン。
遅い青春時代に食べた、世明けのペヤング・・。
味の記憶をたどると、眠っていた思い出の扉が開き、
胸いっぱいになったことはありませんか?
優しい視点でユーモアたっぷり、胸がホロリとくる22品の美味しいカラーイラストエッセイ集。
今回のこの本も懐かしい食べものが満載でした。
私も一時期はまったペヤング。
懐かしい。
水きりのお湯で熱い思いしたことあったなぁとか。
ペヤングの意味ってそういう意味だったの!!とか。
そして日日是好日でも出てくる、お茶の先生とのやりとりや、
茶道で食べたおいしい和菓子のお話し。
読んでいるだけでも「あぁ、食べたい!!」となります。
「こいしいたべもの」を読んで印象に残った言葉
P31~
梅だ・・・。梅が咲いている。
ハッとした。
これが梅の香りというものか・・・!
今まで梅の香りを詠った歌や文章をどれほど読んできただろう。
自分でも、手紙の中で幾度となく、
「梅の香る頃となりました」
と書いてきた。
なのに、知らなかった。
この寒さの中でいじらしく咲く花が、これほど甘くかぐわしく、
あたり一帯を包み込むとは・・。
その時から、梅は私の人生の内側で咲くようになった。
人は心で受け入れて初めて、本当の色や香りに触れる。
私はもうすぐ四十歳になろうという年だった。
梅の香りを知るのに、ずいぶん長い年月がかかった。
その時、思った。
何かを本当に知ることは、一つ一つ時間がかかる。
私は今まで、一体いくつのことを本当に知っただろう。
たぶん、知ったつもりで素通りしたものがほとんどで、
本当に知ったことは数えるほどしかないにちがいない。
そして、きっと一生をかけて、ほんのわずかなことを本当に知っただけで、死んでいくのだろう。
だけど、それでいいと思った。
数少なくとも、本当に知ったことだけを大切に味わいながら生きていきたいと・・。
この話のくだりは、茶会で大宰府の「清香殿」というお菓子を食べたエピソードから始まる。
習い事の茶道の帰り道、梅の香りをかいだ瞬間に著者が悟った心の内面だ。
人はさまざまな場面で、視覚や香りから、人生の真理が分かる瞬間がある。
人は本当に何かを知ることには時間がかかる。
生きている間知れることには限りがあること。
そうやって一生を終えていくこと。
そんなことを知ったこの場面が凄く惹かれた。
森下さんの文章はたまにこういった、ハッとさせられる真理が散りばめられている。
だから私は凄く共感したり、うなったり。
森下さんの文章のとりこになる。
私の人生もきっとこんな感じに、あの時分からなかったことを「知る」瞬間の連続なんだろうなと思った。
そして自分自身、「梅の香」には思い出がある。
だからかな。
このエピソードが余計に脳裏にフラッシュバッグさせた。
あの時見た、梅の花。梅の香り。
こんなにも梅の種類があることを知ったあの時。
梅の花を毎年見る度に思い出すのだ。
おわりに
誰もがもっている食べものとの思い出。
読んでいて本当に幸せな気持ちになるエッセイでした。
またこういう本を読みたいな。
森下典子さんのエッセイ。
好きになりました。
他の作品も読んでみようと思います。
本自体も薄い文庫本なので、箸休め的に本を読みたい人におススメの一冊です。
読んだら共感する、懐かしい食べものがでてくること間違いなしです。
引用文は全て森下典子さん著書「こいしいたべもの」文春文庫より
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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