本のある暮らし

人生は一冊の本のように味わい深いです。そんな日々を綴ります。

【読書感想レビュー】歌舞伎に人生を賭けた人間の物語。吉田修一さん著「国宝 上下巻」を読みました。

※当ブログにはプロモーションが含まれています

おはようございます。

 

1冊読み終わったので感想を綴りたいと思います。

 

今日ご紹介する本はこちら。

 

 

吉田修一さん著「国宝」です!!

 

 

 

 

映画が記録的ロングヒットで話題の国宝。

 

現在生後3か月の赤子が居るため、

映画館に行けない!!

ということで小説で読みました。

 

わたくし、歌舞伎という世界に全く関わったことも、

かじったこともない人間でしたが、

「国宝」

小説でもあっという間に世界観に没入できました。

 

それほど素晴らしい作品でした。

やはりそれは、

作者の吉田修一さんの秀逸さだと思います。

 

自身も歌舞伎の世界に身を置いたことがある経験のせいか、

情景が事細やかに描かれています。

 

そして、何よりも独特の語り口調なのが物語に入りこみやすかったです。

小説を読んでいるのに、

自分の頭の中に映像が映し出されるんです。

 

小説を読んでいるという感じがなく、

私は天からこの「喜久雄」という主人公の人生を眺めている。

そんな読書でした。

 

あらすじと感想

 

この物語は、

戦後の長崎の任侠一家のトップの息子として生まれた「喜久雄」が歌舞伎役者として生き、国宝になるまでの50年が描かれています。

 

物語は、正月の宴会会場から始まります。

宴の席で喜久雄は徳次と踊ります。

 

人前で女形として踊った喜久雄は、こんな感想を述べていました。

 

「幕が開いたとたん、勝手に体が動き出して、気づいたら、もう終わっとった」

 

喜久雄は14歳、徳次は16歳。

二人は気が合うようで、「坊ちゃん」「徳ちゃん」と言い合う仲です。

 

この徳次が人間味あふれる人物でして、

この物語の中でも大切な存在なのです。

 

 

その宴会に偶然いた、歌舞伎役者、

花井半二郎の目に留まった喜久雄。

一瞬の輝きを見逃さない人との出会いが運命を変えます。

 

その宴会で喜久雄の父は乱闘に巻き込まれ命を落とし、

喜久雄は孤児になってしまいます。

 

花井半二郎の家に引き取られたことで、

歌舞伎の世界に足を踏み入れることになります。

 

半二郎には、息子の俊介がいました。

喜久雄と俊介は切磋琢磨しながら、

お互い芸を極めていきます。

 

そこから喜久雄の人生は大きく変わるのですが、

10代から歌舞伎一筋で生きた生き様や、

喜久雄と関わった人たちの人生。

 

この本は、歌舞伎だけじゃなく、

「人生そのもの」を色濃く描かれた作品だなと思いました。

 

歌舞伎は「生と死」が描かれていること。

それは人間の本質でもあり、

江戸の時代から変わらず、

人生を体現している芸術なんだなと思うのでありました。

 

切なさや儚さ、

生きる喜び、出会いと別れ、

人間誰しも経験するそれらのこと。

 

喜久雄が「国宝」になるまで、

どれだけのことがあったのか。

 

所作や台詞、ひとつひとつに宿る思い。

歌舞伎って美しいんだな。

そんな風に感じました。

 

これを映像で観たらもっとうっとりするんだろうな。

凄い世界だなと感じました。

 

小説のいいところは、

映画では感じられない、

細やかな感情を知れることだと思います。

 

一番いいのは、

映画も小説も読むことだと思います。

 

改めて本の世界の凄いところは、

こうやって、昨日まで何の関わりも興味もなかった世界を見せてくれること。

好奇心を揺さぶられること。

まだまだ知らない世界があることを教えてもらえることです。

 

印象に残った場面

 

この本を読んで印象に残った場面を紹介したいと思います。

ネタバレを含みますので、

ネタバレが嫌な方は閉じてくださいね。

 

 

 

 

 

「おまえに一つだけ言うときたいのはな、

どんなことがあっても、おまえは芸で勝負するんや。

ええか?どんなに悔しい思いしても芸で勝負や。

ほんまもんの芸は刀や鉄砲より強いねん。

おまえはおまえの芸で、いつか仇とったるんや、ええか?

約束できるか?

 

この言葉は、

半二郎の命の灯の時間が残り少なくなっていっている時に、

病室でかけられた言葉です。

 

父を亡くした喜久雄へのメッセージでもあるし、

これから起こるであろう苦難に呈した言葉でもあると思いました。

 

 

 

あそこにいた乳母日傘の御曹司は、

息子をその腕のなかで失うという壮絶な悲しみを背負ってここにおり、

そしてあそこにいた道楽育ちの牛若丸もまた、

決して順風満帆にこの場所へたどり着いたわけではありません。

 

「懐かしいなあ」と、どちらかが一言口にすれば、

あとは無尽蔵で溢れだすはずの懐かしき思い出の数々。

しかしそれを何かが引きとめるのはどちらも同じ。

一つ懐かしさに浸れば、その裏にあるのは誰かとの悲しい別離。

 

二十年余り音信不通だった俊介と喜久雄との食事の席での様子です。

 

会わなかった間に二人は様々な困難がありました。

 

人生とは長く生きていると、

嬉しいことも、悲しいこともたくさんあります。

 

喜久雄と俊介。

読者として、それぞれの人生を追ってきたからこそ、

沁みる文章でした。

 

そして、私自身との人生も重なる場面でした。

 

おわりに

 

この本を読んで、

歌舞伎という世界をほんの少し味わうことができて、

嬉しく思いました。

 

これだけ凄い小説だから、映画にもなったんだと思います。

そしてそれを演じきる俳優さんたち、

形にする監督さんや、現場の人たち。

 

作品を通して現実世界が少し変わる人たち。

 

多くの人の心を動かす物語の力は凄いなと思いました。

 

映画を観てなくても十分楽しめました。

 

またこういう小説に出会いたいなと思う読後感でした。

今年読んでよかった本にランクインです。

 

読んだ方の感想お待ちしています。

 

引用文は全て吉田修一さん著「国宝」より。

 

以上、吉田修一さん著「国宝」を読んだ感想でした。

 

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

読んだよ~!のしるしに、ポチっと応援して頂けると更新の励みになります^^ ↓